「捜査のプロ活用で指導・監査の充実を」との提案も、厚労省政策コンテスト

「捜査のプロ活用で指導・監査の充実を」との提案も、厚労省政策コンテスト

2010年07月22日 m3.comより引用。


 「権限の相違はあるものの、悪を正し刑罰(行政上の措置)を課す点においては共通点があることから、犯罪(詐欺罪)に対するプロである警察庁や警視庁(捜査第二課=知能犯、詐欺、横領担当)からの出向者の受け入れ」

 「保険医療指導監査部門の充実強化」策として、こんなアイデアが7月22日の厚生労働省政策コンテスト(第二次選考)で出されました。提出したのは、同省保険局医療課の医療指導管理官の向本時夫氏。
 
 「政策コンテスト」は、厚労省が2011年度の新規施策を打ち出すために、全職員からアイデアを募集、選考する取り組み。応募があった81件のうち7件に絞られ、22日に提案者が、その公開の場でプレゼンテーションを行いました。7件のうち2件が向本氏の提案です。

 選考の結果、7件のうち1件が最優秀賞、3件が優秀賞、2件が奨励賞となり、この「保険医療指導監査部門の充実強化」だけが表彰の対象外でした。向本氏は、「性悪説とは言わないが、案件によっては非常に悪質、複雑なものがある。医師でない方がいろいろやっており、我々の権限が及ばない部分があるため、捜査のプロを私どもの組織に受け入れることができないかという提案」と述べ、やや「特殊な事例」を想定しての提案としつつ、「捜査のプロと一緒に行くことにより、職員の資質向上につながる」としています。第1次選考で81件のうち7件にこの提案が残ったこと、また保険医療の指導・監査のまさに担当者からの提案であることは、注目に値するでしょう。
写真政策コンテストは、7月22日、午後2時から午後5時まで開催。その冒頭、挨拶する、長妻厚労相

 向本氏のもう一つの提案とは、「対医療機関等に対する指導監査部門の統合等」で、優秀賞に選ばれました。これは、健康保険法に基づく指導・監査のほか、医療法に基づく医療監視、生活保護法に基づく立ち入り検査、労働者災害補償法に基づく労災認定に関しての立ち入り検査という、医療機関に対する調査・指導・監督(監査)の組織を統一し、一体的実施を目指すもの(概要は文末を参照)。

 これらの中には、現在、国ではなく、都道府県が実施しているものもあるなど、向本氏の提案を全面的に実施というわけではありませんが、長妻昭厚労相は次のように語り、「一体的実施」という考え方を評価しています。

 「医療機関のみならず、いろいろな場所に厚労省は指導監督という権限を持って対応している。縦割りで、それぞれの部署が行き、医療機関にとっても負担であり、また立ち入る側にとっても横の情報共有がおろそかになっていないかという問題意識は参考になった。内閣官房に組織を作ってやるかどうかは、議論があるところ。また、地方自治体に下りている権限を、国に戻すということには直ちに行かないだろうが、何らかのチーム、一体となった体制を作るという提案は共感できる。医療機関側あるいは立ち入る側などへのニーズ調査、アンケート調査などを通して、こうした考え方を実践していきたい。他の分野でも調査を実施して、縦割りにならない取り組みについて前進していきたい」

 この「政策コンテスト」詳細は医療維新のコーナーで改めてまとめます。

厚生労働省政策コンテスト・優秀賞
【対医療機関等に対する指導監査部門の統合等】の概要
提案内容:
1.給付の適正化等の目的として各制度ごとに実施している対医療機関等に対しての調査・指導・監督(監査)について、組織を統合し一体的実施を図る。
2.統合した組織は、政策部門とは切り離し大臣官房に設置。

提案に当たっての考え方:
1.国民的目線→効率化(重複業務の排除)、厳格な監視の目
2.効果的な実施→同時実施による言い逃れ等の排除
3.対医療機関対応のためのプロ集団の養成
4.第三者的立場の法の番人的役割の必要性および重要性

実施された場合の効果:
1. 各制度における調査・指導・監督(監査)の充実強化
2. 対応件数の増加
3. 行政サイド、医療機関サイド双方における効率化
4. 政策部門への現場からの提言による、実態に即した法整備の実現