(兵庫)警察歯科医会 21日神戸で全国大会

(兵庫)警察歯科医会 21日神戸で全国大会
2010年8月19日 提供:読売新聞
脱線事故の経験報告

 大規模な事故や災害、事件などで身元不明の遺体の確認に貢献している「警察歯科医会」の全国大会が21日、神戸市中央区で開かれる。県内では初の開催で、JR福知山線脱線事故の時に遺体を調べた県警察歯科医会監事の黒田延彦さん(70)が経験談などを報告する。黒田さんは「少しでも早く遺体を遺族の元に返してあげたい。そのために、歯1本の特徴も見逃さないよう心がけている」と話している。(上田友也)

 歯型や歯の治療痕は人によって異なる。このため、歯科医で治療を受け、カルテが残っていれば、損傷が激しく、所持品がない遺体でも身元の特定につながりやすい。520人が犠牲になった1985年の日航ジャンボ機墜落事故がきっかけになり、有効性が知られるようになったという。

 これ以降、全国各地の歯科医師会内に警察歯科医会が発足。県警察歯科医会は86年につくられ、歯科医48人が県内各署から委嘱を受けている。遺体の歯1本ずつの形や大きさ、治療痕を詳細に記録し、写真も撮影して「デンタルチャート」と呼ばれる書面を作製。歯科医師会に照会して、カルテなどの確認を求める。

 黒田さんは神戸市中央区で開業しており、94年から神戸水上署の警察歯科医を務める。年約10体、これまでに150体以上の遺体と向き合ってきた。

 2005年4月のJR事故では、発生翌日から3日間、遺体安置所になっていた尼崎市記念公園総合体育館に通い詰めた。身元が判明した遺族からは「もう帰ってきてくれないと思っていましたが、見つけてくれてありがとうございます」と涙を流されたという。

 県警察歯科医会によると、遺体の検案数は86年度に11件だったが、昨年度は141件まで増加しており、警察歯科医の役割は重要性が高まっている。阪神大震災でも70件を調べた。

 黒田さんは「衣服は着替えさせることができるが、歯を入れ替えるのは不可能。1本でも有力な手がかりになるので、細心の注意を払いたい」と語る。

 全国大会は9回目。JR事故や震災に関する報告のほか、警察庁OBらの講演がある。一般参加の受け付けは締め切られている。