地域医療貢献加算の算定の届出はやめましょう

至 急 連 絡
平成22年3月23日

各 位

青森市医師会
会  長 齊 藤   勝


地域医療貢献加算の算定の届出はやめましょう

 4月からの診療報酬改定において、地域医療貢献加算(3点)が新設されました。
 3点は電話の問い合わせがあった時だけ算定するのではなく、通院中の全患者の再診料に加算されます。したがって、この算定を届け出た医療機関は、過去に受診した人も含め、全患者に24時間365日体制で対応することが求められています。
 算定要件としては、緊急時の対応体制や連絡先などを院内に掲示し、診察券に電話番号を記入するなど、文書等で患者に周知する必要があります。
 転送/留守番電話・職員による対応も可能となっていますが、職員は速やかに医師に伝え「医師自らが速やかに患者さんに連絡をとること」になっています。有床診療所でも、最終的に連絡するのは医師なので、医師は常時携帯電話に縛られることになります。
 即座に対応出来ない場合、特に患者さんが死亡した場合などではトラブルに発展する可能性もあります。規則では「緊急の対応が必要と判断された場合には、外来診療、往診、他の医療機関との連携又は緊急搬送等の医学的に必要と思われる対応を行うこと」になっています。
 4月からは診療内容のわかる明細書の発行が義務づけられました。全ての明細書に「地域医療貢献加算3点」と記入されますので、医師の応召義務と責任がことさら強調されることになります。無償で電話対応をしている現在とは全く違う状況が生まれます。
 もしトラブルになった時には、即座に謝罪のマスコミ発表が必要 になるでしょう。患者通報による個別指導の対象になり、自主返還、監査に発展する可能 性すらあります。
 そもそも「勤務医支援のために、何もしていない開業医にも汗を 流させる」という発想自体が誤りです。私たちは医師としての使命感や責任感から時間外対応はもちろん夜間、休日診療、健診・保健事業などに参加していますし、急病センターに出向き、在宅当番医が夜間休日の対応をしています
 地域医療貢献加算は、どこにいても「24時間応召義務を課 す」という、全く新
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しいルールとなっています。24時間、365日対応することになれば、心身の休まる時はなくなります。ただでさえ過重労働になっている開業医の状況を勘案すれば、最悪の場合過労死という事態もありえます。医療崩壊に更に拍車をかけ地域医療を大きく後退させることは明らかです。
 今大切なことは30円を得ることではなく、「落とし穴」のようなルールを否定し、医療崩壊を防ぐ適切な医療政策を政府・厚労省に求めて行くことだと思 います。

 「地域医療貢献加算」算定の届出はやめるようにお願いします。
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以下は、考えられるトラブル(個別指導に直結する)です。

1.対応できない場合
  ・旅行中、学会出席中、飛行機内........連携医師、医 療機関が必要
  ・誤って携帯の電源が切れていた
  ・マナーモードで気づかなかった
  ・枕元に携帯電話をおいて寝なかった
  ・夜間睡眠中で気づかなかった
2.医師の飲酒中の対応:
   飲酒中は連携医師、医療機関が必要と考えられます。
3.緊急時の対応にも問題があります
 「緊急の対応が必要と判断された場合には、外来診療、往診、他 の医療機関との連携又は緊急搬送等の医学的に必要と思われる対応を行うこと」となっています。
  ・医師が「救急車を読んでください。」と指示した場合、向かう先を医師が準備するのか?救急隊に任せるのか?連携先か?
救急病院が受け入れ不可能の時には「診察の義務」がある か?(応召義務)
  ・精神科救急......ほぼ対応不可能か?
   「これから自殺する」「深夜になっても眠れない」という電 話対応は可能か?
  ・患者さんが旅行先等から電話してきた場合はどうするのか?
4.カルテを見ないで診察の問題点
  ・最悪の結果になった時に法的にどのように判断されるのか?
  ・医師賠償責任保険は使えるのか?
5.飲酒患者への電話対応は断れるのか?
6.他人が本人に「なりすまして」個人情報を取得しようとした時は
見抜けるか?
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