「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」を遵守せよ

朝日新聞 声 掲載

足利事件無期懲役刑に服していた菅家利和さんのニュース写真を見て、
職業柄なのか口腔内に目がいった。
 写真では菅家さんの上顎の左の臼歯は全部が欠損、右の臼歯もほとんど
欠損しているように見えた。下顎の左右の大臼歯も欠損しているように見えた。
また右上の側切歯に大きなう蝕が見られた。菅家さんは臼歯部では咬むことができず、
前歯五本だけがかみ合っている。毎度の食事にさぞかし不便だったことだろう。
菅家さんの歯の治療が放置されていたことだけでも、収容時の処遇の悪さが表れている。
「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」には、被収容者が負傷し、
若しくは疾病にかかっているとき、又はこれらの疑いがあるときは必要な医療処置を講ずる義務がある、と書いてある。

 菅家さんは冤罪で一七年半も獄中に入れられた上に、満足な歯科治療を受けられなかった
という二つの苦痛を味わったことになる。国は今回の足利事件での捜査方法を反省し、
菅家さんの処遇の不備がなかったかどうかも検証する必要がある。
その上で、全ての被収容者に対して歯のう蝕や欠損、歯周病など口腔の疾病の
治療を十分に行い、法に書いてある「適切な医療上の措置を講ずる」べきだ。